ヒト試験における安全性評価とは?分かりやすく徹底解説
食品、サプリメント、ヘルスケア製品、化粧品などの開発では、製品の機能性だけでなく、摂取・使用時の安全性評価をどのように設計するかが重要な検討事項となります。特に機能性表示食品やヘルスケア領域では、社内判断資料、届出資料、論文投稿、販売前の品質・薬事確認など、目的に応じてヒト試験の位置づけが変わります。
一方で、ヒト試験は「実施すればよい」というものではなく、試験目的、試験参加者の条件、評価指標、試験デザイン、倫理審査、CROや医療機関との連携などを事前に整理する必要があります。設計が不十分な場合、得られたデータを十分に活用できなくなる可能性もあります。
本稿では、ヘルスケア製品開発におけるヒト試験の安全性評価について、企業担当者が押さえておきたい試験設計・評価・運用上のポイントを解説します。
ヒト試験における安全性評価とは
ヒト試験における安全性評価とは、食品、サプリメント、ヘルスケア製品などを試験参加者が一定条件下で摂取または使用した際に、体調変化、臨床検査値、バイタルサイン、有害事象などを確認する評価のことです。
企業がヒト試験を検討する背景には、製品開発段階でのリスク把握、機能性表示食品の届出に向けたエビデンス構築、社内での意思決定、外部説明資料の整備などがあります。特に機能性表示食品では、機能性に関する評価だけでなく、摂取目安量や対象者像を踏まえた安全性情報の整理が求められるため、ヒト試験の設計段階から安全性評価の視点を組み込むことが重要です。
医薬品の臨床試験とは目的や制度上の位置づけが異なる場合がありますが、試験参加者に関わる研究である以上、倫理審査、同意取得、データ管理、検査体制などを適切に整える必要があります。
ヒト試験の目的を明確にする
安全性確認を目的とした試験
「ヒト試験 安全性評価」を目的とする場合、通常摂取量での評価に加え、長期摂取、過剰摂取、単回摂取後の体調変化などが検討されることがあります。目的に応じて、以下のような観点を整理します。
- 通常摂取量で一定期間摂取した際の安全性情報を把握する
- 摂取量を増やした条件で体調変化や検査値変動を確認する
- 単回摂取後の短期的な変化を確認する
- 既存の文献情報や食経験とあわせて安全性を整理する
ただし、安全性評価の結果は「安全である」と断定するためではなく、設定した条件下で観察された事象や検査結果を整理し、企業の判断材料として活用するものと捉えることが重要です。
安全性評価で検討される試験デザイン
長期摂取試験
長期摂取試験は、一定期間にわたり試験食品や試験製品を継続して摂取・使用し、体調変化、臨床検査値、バイタルサイン、有害事象などを確認する設計です。機能性表示食品やサプリメントでは、摂取目安量に近い条件で数週間から数か月程度の試験期間が設定されることがあります。
安全性評価では、摂取前後の検査値変動だけでなく、試験期間中に発生した体調変化の記録、摂取遵守状況、併用薬や生活習慣の変化なども確認対象となります。
過剰摂取試験
過剰摂取試験は、通常の摂取目安量を超える量を一定期間摂取した際の安全性情報を把握するために検討されることがあります。機能性表示食品の届出を視野に入れる場合、製品特性や成分の性質、既存情報の有無に応じて、試験実施の必要性について判断します。
安全性を評価する試験では、試験参加者への負担や倫理的妥当性を十分に確認する必要があります。そのため、摂取量、期間、検査項目、医療機関の管理体制を慎重に設定することが求められます。
ランダム化比較試験・プラセボ対照試験
機能性評価を含むヒト試験では、ランダム化比較試験やプラセボ対照試験が用いられることがあります。安全性評価のみを主目的とする場合でも、比較対象を設定することで、体調変化や検査値変動が試験食品に関連する可能性を検討しやすくなる場合があります。
二重盲検や並行群間比較試験を採用することで、試験参加者や評価者の認識による影響を抑える設計が検討されます。ただし、すべての安全性評価で同じデザインが適しているわけではありません。製品特性、試験目的、予算、スケジュール、試験参加者負担を踏まえて設計することが重要です。
クロスオーバー試験や単回摂取試験
クロスオーバー試験は、同じ試験参加者が複数の条件を一定期間ずつ経験する設計です。個人差の影響を抑えやすい一方で、前の摂取条件の影響を避けるための休止期間が必要になる場合があります。
単回摂取試験は、摂取後の短時間で変化を評価する設計として用いられることがあります。安全性評価では、摂取直前から一定時間後までの体調変化、血液検査、バイタルサインなどが確認されることがあります。
安全性評価における評価指標の設計ポイント
主評価項目と副次評価項目
ヒト試験では、主評価項目と副次評価項目をあらかじめ明確に設定します。安全性評価を主目的とする場合、主評価項目には有害事象の発生状況、臨床検査値の変動、医師による安全性所見などが設定されることがあります。
副次評価項目には、体重、BMI、血圧、脈拍、体調アンケート、摂取遵守率などが含まれる場合があります。機能性評価を同時に行う場合は、機能性に関連する客観指標や主観評価を副次的に設定することもあります。
客観指標と主観評価
安全性評価で用いられる客観指標には、血液検査、尿検査、血圧、脈拍、体温、身体計測値などがあります。製品や成分の特性に応じて、肝機能、腎機能、脂質関連指標、糖代謝関連指標などが確認対象となることがあります。
一方、主観評価としては、体調変化の記録、日誌、アンケート、VAS、質問票などが用いられることがあります。主観評価は試験参加者の自覚的な変化を把握するうえで参考になりますが、記入方法や評価タイミングを統一しておくことが重要です。
試験参加者の選定で確認すべきポイント
選択基準と除外基準
ヒト試験では、試験目的に合致した試験参加者を選定する必要があります。安全性評価における選択基準には、年齢、性別、BMI、生活習慣、対象となる指標の範囲などを設定し、健常者から疾病の境界域の者に至るまでの範囲で、目的とする保健の用途の対象として適切な者を選択します。
除外基準には、既往歴、服薬状況、妊娠・授乳の有無、アレルギーの有無、過去の臨床試験参加歴、生活習慣の大きな変動予定の有無などを設定し、関与成分や摂取条件に応じて、試験参加者の安全性確保や適切な評価を行うために慎重に検討します。
実施時のオペレーションとCRO選定
CRO・医療機関との連携
ヒト試験を円滑に進めるためには、CRO、医療機関、検査機関、倫理審査委員会などとの連携が重要です。CROを選定する際は、対象領域での試験実績、試験参加者リクルート体制、プロトコル作成支援、データ管理、モニタリング、統計解析、報告書作成までの対応範囲を確認します。
医療機関との連携では、医師の関与範囲、検査体制、有害事象発生時の対応、試験参加者への説明体制を明確にしておくことが求められます。
安全性評価では、体調変化が生じた場合の記録や連絡方法、医療機関での確認手順も事前に整理しておくことが重要です。
データ管理・モニタリング・スケジュール管理
試験中は、データの記録漏れ、検査日程のずれ、摂取遵守状況、日誌の記入状況などを管理します。モニタリングでは、プロトコルに沿って試験が実施されているか、同意取得や検査記録に不備がないかを確認します。
特に安全性評価では、有害事象の記録、重症度、試験食品との関連性の判断、対応経過などを適切に管理することが求められます。最終的なデータ解析や報告書作成に影響するため、運用段階での品質管理が重要です。
費用・スケジュールを検討する際の考え方
ヒト試験の費用やスケジュールは、試験規模、試験参加者数、検査項目、摂取期間、来院回数、リクルート条件、解析内容、報告書の範囲などによって変動します。
一般的には、長期摂取試験や過剰摂取試験では、試験期間や検査回数が増えるため、費用・スケジュールへの影響が大きくなる傾向があります。また、対象条件が細かい場合や、特定の指標を満たす試験参加者を集める場合は、リクルート期間が長くなる可能性があります。
企業担当者は、早い段階で以下の項目を整理しておくと、CROや医療機関との見積もり・設計相談が進めやすくなります。
- 試験の目的
- 対象製品・成分の情報
- 想定する摂取量・摂取期間
- 評価したい安全性指標
- 試験参加者の条件・例数
- 届出、論文投稿、社内資料などの活用目的
- 希望する実施時期と社内判断の期限
金額や期間は一律ではないため、初期相談の段階では「どのデータを得たいのか」「どの用途に活用したいのか」を明確にすることが重要です。
アポプラスステーションに相談する際の整理事項
アポプラスステーションにヒト試験の企画・実施支援を相談する場合、事前に製品情報、評価したい項目、試験の活用目的、想定スケジュールを整理しておくと、具体的な試験設計の検討につながりやすくなります。
安全性評価では、製品の成分特性、摂取目安量、想定する対象者、既存データの有無によって、適した試験デザインや評価指標が変わります。初期段階からCROや医療機関との連携を想定し、プロトコル、倫理審査、試験参加者リクルート、データ解析までの流れを確認しておくことが有用です。
まとめ
ヒト試験における安全性評価では、試験目的、試験参加者の条件、評価指標、試験デザイン、実施体制を事前に整理することが重要です。特に機能性表示食品やヘルスケア製品開発では、機能性に関するエビデンスだけでなく、摂取・使用条件に応じた安全性情報をどのように取得し、どのように活用するかを検討する必要があります。
企業担当者は、まず以下の点を整理すると、ヒト試験の企画が進めやすくなります。
- 何を目的に安全性評価を行うのか
- どのような試験参加者を想定するのか
- どの評価指標を設定するのか
- 長期摂取、過剰摂取、プラセボ対照など、どの試験デザインが適しているか
- CRO、医療機関、倫理審査、データ解析をどの体制で進めるか
アポプラスステーションは、ヒト試験の企画、試験設計、実施支援、データ整理に関するご相談先の一つとしてご検討いただけます。安全性評価を含むヒト試験を計画する際は、早期に目的と活用方法を整理し、実務に即した試験設計を検討することが大切です。