ヒト試験で肝機能を評価するには?企業担当者が押さえる評価関連指標・試験設計のポイント
食品、サプリメント、ヘルスケア製品の開発において、肝機能に関連するエビデンス構築を目的にヒト試験が検討されることがあります。肝機能領域では、ALT、AST、γ-GTPなどの血液検査項目が評価関連指標として用いられることがあり、試験食品の摂取前後やプラセボ群との比較によって変化を確認する設計が検討されます。一方で、肝機能は医療上の診断・治療と近接しやすいテーマであるため、企業担当者は、試験の目的によって病者を対象とした試験にならないよう、試験対象者の条件や除外基準を慎重に設計する必要があります。本稿では、肝機能領域におけるヒト試験の設計・評価・運用上のポイントを解説します。
20年以上の実績と経験があるアポプラスステーション株式会社
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肝機能領域のヒト試験で評価される関連指標
ALT、AST、γ-GTPなどの血液検査項目
肝機能領域のヒト試験では、ALT、AST、γ-GTPなどの血液検査項目が評価関連指標として設定されることがあります。実際に、公開されている食品関連の臨床研究情報でも、肝機能マーカーとしてALT、AST、γ-GTPを評価関連項目として設定された試験例があります。
ただし、これらの検査値は医療上の診断にも用いられる項目であるため、食品やヘルスケア製品のヒト試験では、疾患の診断、治療、予防を目的とした表現にならないよう注意が必要です。企業担当者は、製品の想定する機能性と、主要評価項目の関係を事前に整理し、プロトコル上で評価目的を明確にします。
機能性表示食品との関係
機能性表示食品としての活用を想定する場合は、届出に必要な安全性・機能性の科学的根拠を、事業者の責任で整理する必要があります。消費者庁は、機能性表示食品について、事業者が食品の安全性と機能性に関する科学的根拠などを販売前に届け出る制度であり、国による個別審査とは異なる制度であると説明しています。
そのため、肝機能に関するヒト試験では、試験デザイン、試験対象者、評価指標、統計解析、結果の表現まで、届出や論文投稿を見据えた一貫性が求められます。
ヒト試験の目的を整理する
探索的試験
探索的試験は、肝機能関連指標のばらつき、摂取期間、測定時点、試験参加者の条件などを確認する目的で実施されることがあります。また、本試験の例数設計の根拠を得るために実施されることもあります。
特に肝機能領域では、ALT、AST、γ-GTPが食事、飲酒、運動、体重変動、服薬、サプリメント摂取などの影響を受ける可能性があります。そのため、探索的試験では、どの程度の変動が想定されるか、どの条件を管理すべきかを把握し、次段階の検証的試験に活用することが考えられます。
検証的試験
機能性表示食品の届出資料、査読付き論文、社内判断資料などへの活用を想定する場合は、検証的試験として設計します。
検証的試験では、主要評価項目を事前に明確にし、摂取前からの変化量、摂取終了時点の群間差、複数時点での推移など、どの解析を中心に判断するのかをプロトコルと統計解析計画書に記載します。
複数の肝機能関連指標を評価する場合でも、ALT、AST、γ-GTPをすべて同列に扱うのではなく、主要評価項目と副次評価項目を分けておくことで、結果の解釈がしやすくなります。
安全性確認
肝機能領域のヒト試験では、機能性の評価とあわせて安全性確認を行うことも検討されます。
安全性評価では、血液生化学検査、血液学的検査、尿検査、バイタルサイン、有害事象などを確認する設計が用いられることがあります。食品関連の公開試験情報でも、肝機能マーカーとともに、バイタルサイン、身体測定、血液検査、尿検査、有害事象が安全性評価項目として設定された例があります。
肝機能評価に用いられる試験デザイン肝機能領域では、単回摂取後の短時間変化よりも、一定期間の継続摂取による変化を確認する設計が検討されることが多くあり、この場合、ランダム化二重盲検プラセボ対照並行群間比較試験が候補になります。
このデザインでは、試験食品群とプラセボ群を同時期に観察し、摂取前後の変化や群間差を確認します。公開されている食品関連の試験例でも、試験食品と対照食品を12週間や16週間などの摂取期間で、ALT、AST、γ-GTPを複数時点で評価した例があります。
肝機能関連指標は個人差や生活習慣の影響を受ける可能性があるため、割付時には、ベースライン値、年齢、性別、BMI、飲酒習慣などを層別因子として検討することがあります。
また、長期摂取試験では摂取率の確認、来院スケジュール、食事・飲酒・運動状況の記録、途中離脱への対応など、運用面の設計も重要です。
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試験対象者の選定と除外基準
選択基準の考え方
肝機能領域のヒト試験では、健常成人のうち、一定の検査値範囲を満たす試験参加者を対象とする設計が検討されます。公開試験情報でも、健常者または健常な成人を対象に、ALTなどの値の範囲を条件として設定した例があります。
ただし、検査値が高い試験参加者を対象にする場合は、医療上の確認が必要な状態を含めないよう、医師の判断、既往歴、手術歴、服薬状況、肝炎ウイルス検査などを含めたスクリーニング体制を検討します。
除外基準で確認すべき項目
除外基準では、B型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイルスの感染、肝硬変を含む肝疾患の既往や疑い、肝機能に影響する可能性がある医薬品や健康食品の使用、過度の飲酒習慣、夜勤やシフト勤務による生活リズムの乱れ、重篤な疾患、妊娠・授乳、試験食品に対するアレルギーなどを確認することがあります。
公開試験情報でも、肝疾患の診断歴や疑い、肝機能に影響を及ぼす可能性がある成分を含む食品・サプリメント・医薬品の使用、アルコール多飲、生活リズムの不規則性などが除外基準として挙げられています。
試験実施時のオペレーション
医療機関・CROとの連携
肝機能領域のヒト試験では、採血、採尿、臨床検査、医師による確認、安全性情報の収集が必要になるため、医療機関との連携が重要です。
CROを選定する際は、肝機能関連の食品試験実績、試験参加者リクルート、医療機関との連携、プロトコル作成、倫理審査対応、データ管理、モニタリング、統計解析、報告書作成までの対応範囲を確認します。
生活習慣の記録と管理
肝機能関連指標は、飲酒、食事、運動、睡眠、体重変動、併用食品(機能性表示食品、特定保健用食品、その他いわゆる健康食品など)・医薬品・医薬部外品などの影響を受ける可能性があります。
試験期間中は、日誌やアンケートを用いて生活状況を記録し、急な生活習慣の変更、飲酒量・喫煙量・運動量の変化、体重変動、服薬開始などを確認できる体制を整えます。
ただし、過度な制限は試験参加者の負担や離脱につながる可能性があります。日常生活を大きく変えないことを基本としつつ、評価に影響する行動を事前に定義することが重要です。
費用・スケジュールの考え方
肝機能領域のヒト試験にかかる費用は、参加者数、スクリーニング人数、摂取期間、来院回数、血液・尿検査項目、医療機関数、試験食品とプラセボの準備、データ解析、報告書作成、論文投稿の有無によって変動します。
特に、ALT、AST、γ-GTPなどの条件を細かく設定する場合、該当する試験参加者を集めるためにスクリーニング人数が増える可能性があります。ヒト試験の費用やスケジュールは、試験規模、検査項目、摂取期間、来院回数、リクルート条件、解析内容などによって変動するとされています。
スケジュールは、試験目的の整理、プロトコル作成、倫理審査、試験食品準備、リクルート、摂取期間、データ固定、統計解析、報告書作成に分けて見積もります。
結果の解釈と活用
肝機能領域のヒト試験では、統計学的有意差の有無だけでなく、群間差の大きさ、信頼区間、ベースライン値、摂取率、飲酒や体重変化、服薬・健康食品使用の変化、欠測や逸脱の状況を含めて結果を解釈します。
主要評価項目で明確な群間差が確認されなかった場合でも、試験対象者の選定条件、摂取期間、測定時点、データのばらつき、生活習慣の影響を検討することで、次回試験の設計に活用できる知見が得られる可能性があります。
一方で、事前に定めていない層別解析や副次評価項目の結果は、探索的な知見として慎重に扱う必要があります。食品・ヘルスケア製品の情報発信では、肝機能に関する医薬品的な効能を断定しないことが重要です。
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まとめ
肝機能領域のヒト試験では、ALT、AST、γ-GTPなどの評価関連指標をどのように位置付けるか、試験目的に応じて適切な試験参加者集団を設定し、肝疾患患者や評価に影響を及ぼす要因を除外するための基準を適切に設計することが重要です。また、脂肪肝を対象とした試験では、FibroScan®によるCAP値や、CT肝脾比などの画像評価指標を活用することで、肝脂肪量の変化を検証する試験もあります。
企業担当者は、機能性表示食品の届出、論文投稿、社内判断資料などの活用目的を早期に整理し、主要評価項目、試験デザイン、摂取期間、生活管理、統計解析計画を一貫したプロトコルに落とし込む必要があります。
アポプラスステーションは、肝機能に関連するヒト試験の企画、医療機関との調整、試験参加者リクルート、データ管理、統計解析などを検討する際の支援先の一つとなります。